あの雪の日は鱗雲の向こう側

NANA MIZUKI LIVEDOM-BIRTH-AT BUDOKAN [DVD]

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ついに我が家にもデスノートLIVEDOMのDVDがやってきた。




少年は忘れることはない。2006年1月21日、水樹奈々26回目のバースディであり、水樹奈々二年連続二回目の武道館公演の日であった。学院では高校生活最後の授業が行われ、今春知り合った友の多くが受けていたセンター試験の日でもあった。

少年は前者にしか用は無かった。期末試験を四日後に控えていても教科書すら持って行きたくはなかった。そんなものを持って行くならペンライト10本持っていけ、少年はそう自分に投げ掛けた。結局仏語の教科書と英語のプリントをバッグに入れたのだが。

少年は負傷した。両足は霜焼けで真っ赤であった。当然である。雪の中に2時間も立ち続けていたのなら。ライブグッズを求めて並んだ、入場者の列は何処かと探した、最後尾まで歩いた、入場口までまた歩いた、歩いた、ひたすら歩いた。雪はもう、雨に変わっていた―

少年にとって負傷は「名誉の勲章」である。傷が身体に刻まれていく程にその傷には歴史が刻まれていく、そう少年は考えていた。言わば傷は戦いの証し、生きて帰ってこれた生命の証し、喜びを分かち合った勝利の証し。少年は歓喜した。寒さに耐え、冷たさに耐え、世間に耐えたその全てが、カタルシスとなって少年の全身を駆け抜けたのだ。その時、少年の頬には一筋の光るものが。少年はもう一介のファンなどではない。身も心も全て解き放ち“信者”へと立派に昇華を果たしたのだった。

愛は此処にあった、夢は此処にあった、希望は此処にあった。そしていま。その断片が、その一抹が、光の束となって軌跡を描きだす。少年は戻れないと思っていた。だがそれは違っていたのだ。今一度、華麗に踊った旅のステージへ―




※これは事実を基にしたノンフィクションストーリーである